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企業の中での「整える時間」をどう実装してきたか

更新日:4月20日

ウェルビーイングファシリテータの神田です。

この連載では、以下の流れでウェルビーイングと作業療法について扱ってきました。


本記事では、その流れを受けて、企業の中でどのようにこの取り組みを実装してきたのか、この1年の実践を通じて見えてきたことを中心に整理します。


はじまりにあった問い


以前私は、自分の仕事と生活と編み物に関する個人的な背景や問いについて書いてきました。 参考:鬱でも不登校でも仕事を辞めないでよかった


忙しさの中で、自分の状態に気づかないまま働き続けてしまうこと。不調が表面化して初めて、ようやく立ち止まることになる構造。

そうした状況に対して、何か別の関わり方ができないかと考えたことが、この取り組みの出発点でした。


個人の問題ではないのではないか


この1年、企業の中で実践を重ねる中で見えてきたのは、このテーマは個人の問題というよりも、多くの人に共通するものではないか、ということでした。

作業療法の視点に触れる中で、人は単に働ける状態であればよいのではなく、自分にとって意味のある活動が、日々の業務の中でどのようなバランスで存在しているかが、その人の状態に少しずつ影響しているのだと捉え直すことになりました。


働く人の不調は、ある日突然現れるものというよりも、毎日少しずつ積み重なるバランスの崩れとして表れてくることもあります。

その前提に立ったとき、企業の中で整える時間を持つことの意味が、少しずつ輪郭を持ってきました。


企業内でのトライアル実施


ニットプログラムの作品例
ニットプログラムの作品例

ニットプログラムは、その一つの試みとして設計してきたものです。

本取り組みは、2025年11月から2026年1月にかけて、都内企業において3ヶ月間のトライアルとして実施しました。

全6回のプログラムを通じて、のべ17名が参加しています。

小規模ではありますが、企業内で継続的に実施することで、参加者の状態や、その変化のプロセスを観察する機会となりました。


作業の中で起きていたこと


プログラムの中では、手を動かす作業に没頭することで、一度仕事から意識が離れ、自分の状態に自然と意識が向く時間が生まれます。

実際の場では、例えば


仕事のことを考えていない時間が生まれ、落ち着いた感じがする

といった声があり、手を動かすという体を使った作業に集中することで、業務から少し距離を取る状態が生まれている様子が見られました。


また、回を重ねる中で


前回と比べて、自分の状態が違うことが分かる

といった発言もあり、自分の状態を捉える感覚が少しずつ育っていく過程も印象的でした。



業務への波及として見えてきたこと


さらに、


ワークショップのあと、数日パフォーマンスが上がる感覚がある いつもなら力尽きるところで、少し踏みとどまれる

といった声もあり、整えるプロセスが、結果として日常の働き方にも影響している可能性が感じられました。


観察から見えてきた構造


こうした観察を通じて、この取り組みの特徴は、いくつかの点に整理できそうです。


一つは、体を動かしながら理解していくという、頭脳労働とは異なる活動であることです。手を動かすことで、思考中心の状態から離れ、感覚を通じて自分の状態に気づくきっかけが生まれていました。必ずしも言葉にならなくても、その時々の体の感覚で気がつくことは継続的に働き続けるためのセルフケアが始まるとても大切な第一歩です。


二つ目は、主体性を取り戻すための小さな活動になっているという点です。

日々の業務では、自分の状態に気づく前に、タスクや役割に引き戻されてしまうことも少なくありません。そうした中で、あえて一度立ち止まり、身体の感覚や自分のペースに意識を向ける時間を持つこと。

こうした活動があることで、働き方そのものを大きく変えなくても自分の状態との関係性を少しずつ取り戻していくことができるのではないかと感じています。


三つ目は、こうした時間が、これからの働き方において前提となる回復の仕組みとして必要になってきているのではないか、という点です。企業活動の多くは頭脳労働に支えられており、考え続けることや判断し続けることが求められています。その一方で、扱う情報量や意思決定の負荷はこれまでと比べて大きく増えてきており、従来のように個人の感覚や経験に委ねたままでは、状態を保ち続けることが難しくなりつつあるようにも感じられます。

そうした中で、組織の仕組みとして身体感覚に立ち戻る時間を持つことが、結果として働き続けられる状態を支えることにつながっていく可能性があります。


現在地とこれから


本取り組みは現在、こうした実践をもとに、実績としてご説明できる段階まで来ています。

まだ限られた事例ではありますが、企業の中で実装し得る一つの形として、手応えを感じ始めているところです。

今後は、トライアルの範囲を広げながら、より再現性のある形へと整えていくとともに、サービスとしての展開も視野に入れて進めていく予定です。


おわりに


組織の成長と生身の人間である働く人のパフォーマンス向上をどう繋ぐのかという問いは、これからの企業にとって、より現実的なテーマになっていくように感じています。

その中で、本取り組みがどのような形になっていくのか。引き続き、実践を重ねながら探っていきたいと思います。


トライアルのご案内


本取り組みにご関心をお持ちいただけましたら、現在トライアル参加企業を募集しています。詳細は以下よりご覧いただけます。

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