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作業療法の世界①―「その人らしく生きる」を支える仕事―

こんにちは。作業療法士の木村です。

普段は、作業療法士を養成する大学で、未来の作業療法士の育成に携わっています。現在、Hyper-collaborationとともに、ニットプログラムに関する取り組みを進めています。

その中で、「なぜ編み物なのか」「なぜそれが人の生活に影響するのか」と考える中で、作業療法の視点が大きく関わっていることを実感しています。そこで今回、作業療法という分野について知っていただきたいと思い、お話しします。


突然ですが、

「好きなことができなくなったとき、人はどうなると思いますか?」

例えば、

ケガをして体が思うように動かなくなったとき。

あるいは、気持ちが落ち込んで、何もする気が起きなくなったとき。

人は、ただ「不便になる」だけではありません。

それまで当たり前にしていたことができなくなると、「自分らしさ」そのものが揺らいでしまうことがあります。

作業療法士は、そうした状態にある人に関わる専門職です。

単に体を動かせるようにするだけではありません。

その人にとって大切な生活。

つまり、「その人らしく生きること」です。

それを取り戻す支援を行います。


作業療法とは


作業療法は、医療分野におけるリハビリテーション専門職のひとつです。

理学療法(運動のリハビリ)は聞いたことがある方も多いかもしれませんが、作業療法は少し異なります。「作業」を通して回復を支えるという特徴があります。こうした考え方は、古くから大切にされてきました。

作業療法の思想的なルーツのひとつに、18世紀フランスの精神科医フィリップ・ピネルがいます。当時、精神障害のある人は閉じ込められ、鎖で拘束されるのが当たり前でした。その中でピネルは、人として尊重し関わること、そして生活や活動を整えることが回復につながると考え、治療のあり方を大きく変えました。

この「活動が人を回復させる」という考え方は、現在の作業療法にも受け継がれています。


「作業」とは何か

作業療法でいう「作業(occupation)」とは、単なる仕事や作業ではありません。その人が日々の生活の中で行っている、あらゆる活動を指します。

例えば、

朝起きる

顔を洗う

食事をする

電車に乗る

働く

趣味を楽しむ

これらすべてが「作業」です。


その中で作業療法が最も大切にしているのは、「その人にとって意味や価値があるかどうか」です。

同じ「料理をする」という行為でも、

・家事として行うのか

・子どものために作るのか

で、その意味は大きく異なります。

作業療法では、この「意味」に焦点を当てます。

同じ体の不自由さがあっても、家事として行うのであれば、出来合いのものを工夫して準備する方法を練習します。

一方で、子どものために作るのであれば、道具を活用して簡単なお弁当を作れるように練習します。

つまり、「その人にとって大切な生活を取り戻すための方法」をともに考え、実践していくことが作業療法なのです。


健康とは何か


作業療法では、健康を単に「病気がない状態」とは考えません。

たとえ障害や問題があっても、自分にとって大切な作業ができていること。

すなわち、「その人らしく生きていること」そのものを健康と捉えます。

もう一つ重要なのが、「作業バランス」です。

「仕事」「休息」「遊び(楽しみ)」といった生活の要素が、バランスよく存在していることが重要とされています。これらが調和していることが、本当の意味での健康につながります。


私たちは日々、さまざまな「作業」に囲まれて生きています。

しかし忙しさの中で、「自分にとって大切なこと」が後回しになってしまうことも少なくありません。

もし今、「本当はやりたいのにできていないこと」があるとしたら。

それは単なる気のせいではなく、生活のバランスが崩れているサインかもしれません。

そしてその問題は、作業療法の視点から向き合うことができるテーマでもあります。

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