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専門家との協働がひらく可能性

神田です。前回は新しく始動してみる小さな場、「ほっこり編み物タイム」をご案内しました。今回は5回目、この連載もなんとか1ヶ月を越えました。

体調が整わない中、休養多めに過ごしていたあるシーズン、私はとにかく編み物をして過ごしました。「ただの暇つぶし」だと思っていたけれど、気づけば驚くほどたくさんの作品が手元に積み重なっていたのです。


小物からセーターやカーデガンまで多種多様な作品たち
小物からセーターやカーデガンまで多種多様な作品たち

こうして並べてみると、編むことが単なる趣味以上の意味を持っていたのではないかと思えてきます。実際に調べてみると、海外では「ニットセラピー」という考え方があると知りました。


そこから「編むことをウェルビーイングにつなげられないか」と考え始め、作業療法士(OT)で大学教員の友人に相談しました。すると彼女は快く協働を引き受けてくれて、今ではプログラム設計や観察・評価の方法などを一緒に議論するパートナーになっています。


作業療法士とは、医療と日常生活をつなぐ専門職です。病気やけがのリハビリだけでなく、「その人が自分らしく生活できること」に焦点を当て、手作業や活動を通じて支援を行います。


例えば編み物は、手先を動かす繊細な動きが脳の活性化や集中力の向上を助けます。一定のリズムで編み続けることは呼吸や心拍の安定につながり、不安をやわらげる効果も期待できます。また「作品が形になる」という達成感は、自己効力感を高める力を持っています。


こうした専門的な視点を取り入れることで、私の「体験としての実感」が裏づけられただけでなく、活動をプログラムとして形にする可能性が開けてきました。


実際に今、私たちは 1時間のプログラムを試作しています。初心者でも参加しやすいようにハードルを下げつつ、過集中を防ぐ工夫や「場に入る」「場を閉じる」というプロセスを意識的に組み込んだ内容です。まだ試行段階ですが、専門家と一緒に設計することで「安心して参加できる場」「セルフケアとしての編み物」の輪郭が少しずつ見えてきました。


「ただ好きだから編む」から一歩進み、「人の健康や生活に役立つ活動としての編み物」へ。その可能性を、これからも手探りで編み進めていきたいと思います。

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