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編むことがくれる余白

手のリズムが心を調整する


前回は、神田個人が、鬱や不登校対応を抱えながらも仕事を辞めずに続けられた体験を書きました。


今回は、その支えになった「編み物」についてお話ししたいと思います。

仕事や子育てに追われ、気がつけば心が張りつめている、歯を食いしばっている――そんな経験はありませんか。


私にとって、編み物はその張りつめを緩めて、解いてくれる時間でした。

編むという行為は、とてもシンプルです。


同じ動きを繰り返し、少しずつ形が積み重なっていく。目を数え、針を動かし、糸の感触に注意を向ける。


それだけで、余計な思考が静まっていきます。

完成品を目指す必要はありません。


「今日はここまで」と区切るだけで、小さな達成感が残ります。


疲れていても「少しだけならやってみよう」と思える、その気軽さも魅力です。

私自身、鬱でエネルギーを失っていたとき、隙間時間に「ちょっとだけ編みたい」と感じられたことが、回復の大きな助けになりました。

段ごとに一定のリズムの繰り返しで編み進めます
段ごとに一定のリズムの繰り返しで編み進めます

針を動かしている間は、まるで頭の中がスッと静かになる。

それは短い時間でも、自分を整えるための確かな余白になっていました。


作業療法というリハビリテーション研究の世界でも、クラフト活動と心の健康との関わりが注目されています。


繰り返しのリズムがもたらす安心感と没入感、作品が形になることで得られる自己効力感、そして何より「自分の手でつくる」喜び。


これらは特別な技術がなくても、多くの人が体験できるものです。

だから私は、編み物を「趣味」だけでとらえるのではなく、心を調整するひとつの方法として大切にしたいと思うようになりました。


完成を急がず、ただ「編むために編む」時間。


そのシンプルな営みこそが、私にとって回復の力になってきました。

私が望んでいるのは、不登校の親だけでなく、日常の中でストレスや揺れを抱えるすべての人が、こんな「編む余白」のような時間を持てることです。


短くてもいい、形にならなくてもいい。


その時間が、次の一歩を踏み出すための支えになっていけばと思っています。

この思いは、私たちの会社のミッションやビジョンとも重なっています。


一人ひとりが余白を持ち、自分を調整できるからこそ、未来に主体的に参画できる。


そんな社会をつくっていくために、私はこの活動を仲間とともに育てていきたいと思っています。

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