自律的に活動する社員が増えていく、自己組織化が進む・・・。
早急な企業変革が望まれる中で、新しいリーダーシップの開発が求められています。
EQリーダーシップに関する連載ブログ。
今日は、その5回目です。
内発的なモチベーションとは、外部からの動機づけ(報酬や地位、あるいは脅威など、外因性のもの)ではなく、個人の価値観や責任感など、内から湧き上がってくるエネルギーを生み出すことです。
教科書のコピーのような、この文章を読んでも、「なんだか掴みどころがないな」と思われるでしょう。
モチベーションとは不思議なものです。
「あげよう!」と意気込んでも、自分のコントロール下にはないかのように感じられることもあるからです。
でも、「やる気がない」状態のまま過ごすのは、案外辛いもの。できたら、何か自らの内側から(そんなに強い気持ちでなかったとしても)やりたいことが湧いてきてくれた方が、過ごしやすい毎日が送れるのではないでしょうか。
■ モチベーションの「種」はどこに
モチベーションが自らの内側から湧いてくることと、意思決定には強い関連性があります。私の経験談をここで1つご紹介しましょう。
私はかつて、IT系のエンジニアをしていました。
ある外資系の情シス部門で働いていた時、仕事はかなり激務でしたが、毎日が楽しくて、やる気に溢れていました。
4年ほど務めた後、別の外資系企業に転職しました。給与は大幅に上がり、望んでいたことも学習できるポジションでした。ところが、その職場に移って間も無く、私は、自分のモチベーションが猛烈に下がっていくのを実感しました。
自分でも、この違いがどうして起きたのか、しばらくわからなかったのですが、だいぶ後になって気づいたのは、自分が意思決定できる領域がどの程度あるかということと、一緒に働く仲間とどのような関係性であったかが大きく響いていたことでした。
仮に最初に勤めていた外資系の会社をA社、転職した先をB社とします。
A社の日本事務所は本当に小さくて、20数名しかスタッフはいませんでした。私は日本側でほぼ1人情シス状態でしたが、本社側に素晴らしいチームメンバーがいて、毎週(当時はZoomなどありませんでしたので)電話会議を行い、離れていても、「チームだ」と感じられる多くの支援をもらっていましたし、コミュニケーションも丁寧でした。
私は日本側のリーダーとして、たくさんのことを意思決定する立場にいました。慣れないことも多く、ストレスがなかったか・・と言えば、それなりにありましたが、それを上回る楽しさがありました。
私は、さらにスキルアップしたくて、B社に転職しました。
転職先のB社は、高いパーティションで1人1人のデスクが区切られた、いかにも「外資系」という感じのオフィスに、専門性が高いメンバーが多数集まっている会社でした。良い人たちばかりでしたが、それぞれが自分の分担をこなす仕事の仕方をし、つながりは希薄に感じられました。別の言い方をすると、チームでゴールに向かう感覚をあまり持てませんでした。
自分の裁量は、アサインされた仕事の範囲のみで、自律的に動いてはいましたが、自分の領域を広げていくにも、方向性がなかなか見えて来なくて、悶々とした日々を過ごしていたのを覚えています。
仕事の量は、前のA社とそれほど変わらなかったように思いますが、やけに負担が高く感じられ、いつも疲れている自分がいました。
「こんな働き方は嫌だな」
A社と比べると、お給料はだいぶアップしたのに、私はどうしても続けていく気持ちになれませんでした。
■ 自己決定理論
私のこの経験を裏付ける理論があります。
米国の心理学者、エドワード・デシとリチャード・ライアンが1985年に発表した「自己決定理論」というものです。
自己決定理論では、内発的動機づけ・・つまり、自分自身で決定した自律的な動機を構成する要素は、次の3つの欲求が満たされることであるとしています。
有能感:自分はやり遂げる能力があることを証明したい欲求
関係性:他者と友好な連帯感を持ちたいという欲求
自律性:自己の行動を自分自身で決めたいという欲求
仲間と共に活動をしながら、自らの意思で物事を決定し、そして、自分は何かを変えていける、生み出していけると実感できていること。これが内発的モチベーションを構成していくことにつながるわけです。
そして、この3つの要素の中で特に重要な欲求が自律性と言われています。
自分で決める。
自分のチームのメンバーに、自分で決められる領域を与え、かつ、仲間として共に連帯感を持ち続けること。
メンバーやリーダーにモチベーションを高く持って欲しい・・・と願うのであれば、その人の置かれている環境にも目を向けていくことが必要でしょう。
また、なぜかモチベーションが湧いてこないな・・と思ったら、3つの欲求に着目してみるのも良いと思います。
有能感、関係性、自律性のどの欲求が今、満たされていないのだろうか。
そんな視点から、解決の糸口が見えてくるかもしれません。
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