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チームを“機能”ではなく“関係性”として捉えるという選択ハイパー・チームマネジメント勉強会で気づいたホールシステムアプローチ

更新日:6月5日



こんにちは。Graat(グロース・アーキテクチャ&チームス株式会社)の浅木です。このブログはハイパー・チームマネジメント勉強会に出席した私が、そこで感じたことをHyper-Collaborationさんの許可なく勝手に綴る「勝手連」企画です。


私の所属するGraat(グロース・アーキテクチャ&チームス株式会社)は、ユーザーとしてハイパー・チームマネジメントを体験していますが、このブログで取り上げる話題はハイパー・チームマネジメント(以下、HTM)の内容と直接関係があったり、なかったりします。

HTMの採用をご検討中の方も、そうでない方も、すでにHTMを実施してる方も、ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。


では、早速はじめていきたいと思います。

今回取り上げるのはハイパー・チームマネジメント勉強会第2回「年老いた組織に若い組織をプロセスとして組み込んだ話」です。

高田さんの話

伝統的なアパレルメーカーでライン管理職に就いた高田さんは、整理整頓されていない倉庫、納入スケジュールに追われる出荷作業、慢性的な残業、仕事の属人化といった課題に直面しました。そこで高田さんが行ったのは、毎日終業時に行われていた「夕礼」の実施時刻を変更するという、ただ一点のことでした。15時(終業の2時間前)に夕礼を行うようにすると、不思議なことに残業が減り、手が空いている人が自然に忙しい人の仕事を手伝うようになったそうです。

この話には、私がHTMの本質と考えていることと通じる要素があります。それは、ひとことで言うと「ホールシステムアプローチ」であると思います。


ホールシステムアプローチとは

ホールシステムアプローチとは、組織の変革や問題解決において、関係するステークホルダー全員の視点を持ち寄り、全体最適を目指す手法です。特徴的なのは、トップダウンでの指示や設計による統制ではなく、メンバー全員が「システムの一部としてどう貢献できるか」を自ら問い、対話を通じて集合的な意思を形成していく点にあります。


このアプローチでは、リーダーの役割は「問題を特定して解決を指示する存在、チームを導く存在」ではありません。むしろ「問いや状況を開く触媒」としての在り方が求められます。ホールシステムアプローチで重視されるのは、個々人の知や行動が交差し、化学反応的に新しい意味や実践が立ち上がる構造です。


高田さんの例に見るホールシステムアプローチの実践

高田さんの話に戻りましょう。先のエピソードについて、「僕は何もしていないのに、チームが変わった」とおっしゃった高田さんの言葉が、強く私の心に残りました。

つまり、高田さんにはチームに問題を提起しようという意図も、問題を解決するために特定の方向へ導こうという意図もなかったということです。

その背景には、「チームとは、人びとの集まりに便宜的に付けられたラベル以上のものであり、ある種の集合意識を持つ主体である」という捉え方があったと思います。

高田さんが行ったことは、チームという主体的な存在に対して、何かを「置いてみる」――この場合は夕礼の時間を変えるということ」――という働きかけでした。そして、リーダーである高田さんは、それをメンバーがどのように受けとめ、どのような行動を起こすかに対して開かれていました


「夕礼の時間を変える」という、一見すると環境条件の調整にすぎないことから、メンバーの主体的な動きが生じ、状況の開示や相互支援といった自律的な行動が自然発生的に生まれた点。ここが、本質的にホールシステム的だったといえるでしょう。

HTMと従来の教育との違い

HTMでは、「リーダーやマネージャーの役割」を一般的な定義として教えることはしません。そうではなく、リーダーやマネージャーが「このチーム」で(このメンバーと、この顧客と、この環境で、このミッションを果たすという文脈において)何を成し遂げたいのか、という問いかけから始めます。

ここが、HTMが従来型の研修と一線を画す、重要なポイントであると私は考えています。

さらに、HTMではリーダーやマネージャーが「このチームで成し遂げたいこと」を伝えたときに、メンバーがそれをどう解釈し、どのような行動を取るか――これは一種の化学反応だと思うのですが――その一連のプロセスを当事者として経験することで、リーダーもメンバーも「チームであること」を手応えをもって体験します。

チームの定義や、リーダーとフォロワーの役割についてのセオリーを与えられ、その「型」に自分たちを合わせていく、しかもチームを構成する「部品」である個々人がそれぞれに合わせていく、という従来の「汎用的な」――つまり、どのチームにも当てはまる、普遍的な――リーダーシップ教育やフォロワーシップ教育とは、ここが大きく異なります。

汎用スキルでは届かない領域

それはつまり、リーダーやマネージャーとは単なる「機能」ではない、というメッセージなのではないでしょうか。

ここで言う「機能」とは、チームの方向性を示し、指示を出し、メンバーの作業状況を管理する、といった一般的にマネジメントに求められる役割のことです。

もちろん、リーダーやマネージャーにはこのような役割が期待されますし、それらを果たすために有用な知識や技能があることも確かです。

しかし、ここで重要なのは、それらの汎用的なスキルは「必要条件」ではあっても、「十分条件」ではないという点です。

むしろ、メンバーやチームを取り巻く文脈と切り離された「リーダー像」や「育成モデル」は、今後、ますます力を失っていくと私は考えています。

状況や文脈に依存しないこと、汎用的であることは、再現性を担保し、それゆえに個別具体的なものよりも価値が高いとする規範意識は、多くの組織に根強く存在しています。

この考え方自体には一定の敬意を払うべきだと思いますが、同時に、汎用性や抽象化された概念モデルに対する過度な信仰には危うさがあると感じます。

レジリエンスを育てる新しい学び

今日のチームや組織は、新たな課題に直面しています。それは、変化し続けるビジネス環境に迅速に適応し続けること、多様化する成員の属性やバックグラウンド、価値観を力に変えることといった、新しい挑戦です。言い換えるなら、レジリエンス(しなやかさ)を身につけるということです。

こうした挑戦に対して、汎用的で普遍的なメソッドに頼る従来のやり方では、もはや十分とは言えません。


組織成員の役割を定義、然るべき人にインストールし、限られた人(典型的には優秀なリーダー)に知見や意思決定を集中させるという従来のアプローチは、チームの硬直化や人々の疲弊といった問題を生み出します。これは、今日の多くの企業が抱えている課題ではないでしょうか。


VUCAな環境への適応に苦戦し、いわば行き詰まってしまったチームや組織にとって、HTMが提供する新しい学びの体験は、大きな希望となると私は感じています。

次回以降、HTMのさまざまな側面を私自身の実体験を交えてご紹介していきたいと思います。


文責:浅木麗子


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