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事例紹介:KDDI様ロングインタビュー「アダプティブリーダーシップ・ワークショップ」体験記 

更新日:2023年10月30日

au PAY アプリチームの新たな挑戦。スクラム導入4年目のチームが挑む「社内アジャイルコーチ育成」を後押しするGraat×HYCのワークショップ


左から、柴田さん、藤木さん、北脇さん

なお、こちらの動画では、インタビューのハイライト場面をご覧いただけます。

インタビューの詳細はぜひ以下のブログをお読みください。



Hyper-collaborationでは去る6月、弊社のパートナー企業であるGraat社のお客さまである、KDDI au PAYチーム・スクラムマスターのみなさんへシックスセカンズジャパン社のEQ検査を活用したアダプティブリーダーシップ・ワークショップをご提供する機会をいただきました。

ワークショップ終了後、ご参加いただいた方々の中から3名の方にインタビューをさせていただくことができましたので、その様子をお届けいたします。


目次:

スクラムをうまくやるためには、ルールを守ってちゃんとやるしかない

様々な立場の人と合意形成してくという難しい課題を乗り越えたい

メンバーそれぞれで重視するポイントが違っていておもしろい

「仕事だからやる」ということの裏側にあるメッセージ

認識合わせを高速で行っていかなければいけない世界の中で


インタビューに答えていただいた方々:

KDDI株式会社

サービス統括本部

システムマネジメント部

アプリケーション2グループ

リーダー:藤木 潤さん

コアスタッフ:北脇 翔さん コアスタッフ:柴田 知弥さん


1. au PAY アプリとは?その進歩に携わるチームが思うこと

スクラムをうまくやるためには、ルールを守ってちゃんとやるしかない


浅木(Graat以後G):最初に、皆さんご自身と皆さんのプロダクトについて、簡単にご紹介いただければと思います。皆さんが携わっていらっしゃる「au PAY アプリ」とは、どんなプロダクトなのでしょうか?


藤木(KDDI 以後K):au PAY アプリは、KDDIが提供するスマートフォン/タブレット用アプリです。QRコード、バーコードなどを使った「コード支払い」や、プリペイドカード、クレジットカードをより便利に使いこなすためのさまざまな機能があり、非常に多くのお客様に「日常の接点」としてご利用いただいています。


浅木(G):au PAY アプリの代表的な機能であるコード決済は私たちの日常に急速に浸透し、ライフスタイルそのものが変わりつつあると感じています。こうした社会的意義の大きいプロダクトに関わることは、皆さんにとってどのような体験ですか?


藤木(K):実は、利用者が多いプロダクトだからやりがいがある、とは思っていないんです。とはいえ、注目されているからこそチャレンジできることも多く、そこには魅力を感じます。また、体制が大きくなり、チームに多様性が生まれたこともやりがいにつながりました。色々な人が関わるようになると、画一的な進め方ではどうにもならない状況が生まれます。自分が「こうだろう」と仮説を立てても、メンバーが全然違うことを思っていたりする。こうした状況へのアプローチには正解がなく、そこが面白いですね。


KDDI 藤木さん
リーダー:藤木 潤 さん

北脇(K):僕は、2018年9月に入社して、直後にスクラムマスターになりました。アジャイル開発は、チームにとっても新しい試みだったのですが、やってみると、スクラムには約束ごとも多く、既存のルールなど、簡単には壊せないものがたくさんある中で「ちゃんとやる」のがすごく難しいなと思いましたね。開発者も、「なんでそんなルールを守らなきゃならないんだ?」という反発心や、うまく回らないこと対するフラストレーションを感じていました。

こうした状況で始まったチームですが、試行錯誤を重ねる中で「うまくやるためには、ルールを守ってちゃんとやるしかない」というところに行き着いて行ったのが、スクラムのおもしろいところだと感じています。

スクラムでは「なんで?」がすごく大事だと思います。スクラムガイドで決められている約束ごとも、メンバーが「なぜやるのか」に腹落ちしていないと、うまく回らない。一人ひとりが腹落ちし、チームで共感し「こうやらないと駄目だ」がピッタリ合うと、パフォーマンスが出せるところが、不思議だしおもしろいと思います。



2. このワークショップを、何を変えるきっかけにしたいと思っていたか

様々な立場の人と合意形成してくという難しい課題を乗り越えたい


吉田(Hyper-collaboration 以後H):北脇さんの言葉にあった「なぜ、このルールを守らなきゃならないのか?」は、新しいルールに対して万人が感じるフラストレーションだと思います。小さなルール変更であっても「忙しい」「慣れたやり方を変えるのは何となく億劫」などと感じてしまいます。この状況が、まさに適応課題です。新しいものに自分自身を適応させる、ということですね。


浅木(G):皆さんのチームは、スクラムの導入段階で、ある種の適応を経験したのだと思います。これは1つブレイクスルーだったと思いますが、スクラムをきちんと実践できるようになった現在は、どのようなことに課題を感じていますか?


藤木(K):我々が、いま、力を入れているのは「社内アジャイルコーチの育成」です。自分たちのチームがスクラムを実践して成果を出すだけでなく、組織の中にアジャイル開発のメリットを伝え、他のチームが取り組む手助けをできるような人材を育てようとトライしています。

この取り組みに限らず、ものごとを進める上で一番難しいのは「合意形成」です。社内コーチを育成する上でも、そこが一番の課題だと思っています。 


柴田(K):チーム内のエンジニアメンバーだけでなく、企画部門のメンバーや意思決定する事業責任者まで、さまざまな立場の人と合意形成をしながら仕事を進めているので、その大変さについては、日々、痛感しています。

難しい合意形成に時間がかかり、簡単にものごとを変えられない環境では、現場のメンバーが不満を感じることもあります。メンバーの声を拾って組織に働きかけるのも、スクラムマスターである自分の仕事だと思っていますが、ひとりでは手に余るテーマも少なくなく、そこは課題だと思います。


北脇(K):スクラムを始めた頃と比較とすると、チームはいろいろな点で変わったと実感しています。じゃあ、何を変えたのか?と考えてみると、「画期的なツールを導入して・・」といった話ではありませんでした。考え方を変えた、大事なことに気づけた、そういうことが広まって、いまがあるのだと思います。何がきっかけになってそういうマインドチェンジが起きるのか?そこを知りたいという気持ちがありました。


北脇さん
コアスタッフ:北脇 翔 さん

3. アダブティブリーダーシップとはどんなワークショップだったか

メンバーそれぞれで重視するポイントが違っていておもしろい


吉田(H)なるほど。IT業界と言えばデジタル・テクノロジー、「0/1」の世界と思われがちですが、実は「0/1」で動くITを作るのは人間だ、というところの難しさを、皆さんは感じていらっしゃるのですね。

実際、IT業界に限らず、組織課題への取り組みにおいて「人」に光を当てるアプローチが、注目を集めています。今回のワークショップでも、EQ(感情知能)を取り上げ、ご自身の職場の適応課題に取り組むワークなどを行いましたが、ワークショップを通じて印象に残ったシーンなどがあれば教えてください。


柴田(K):今回のワークショップは、社内アジャイルコーチ育成の一環として実施しましたが、個人的にはアジャイルやスクラムに限らず、どんな仕事にも、もっと言えば、仕事だけでなく家庭でも、たとえばお小遣いの値上げ交渉にも(笑)使えるのかな、という期待がありました。 実際のワークショップでは、「クラウド」という思考ツールを使ったワークが難しかったことが印象に残っています。一人ではなく、グループで取り組むワークだったことが、難しさのポイントなのではないかと思います。

1つの課題についても、どこが問題の本質なのかという捉え方や、こういう言い回しがしっくり来るというニュアンスなどが人によって少しずつ違っていて、いろいろな考え方があるんだなと思いました。


柴田さん
コアスタッフ:柴田 知弥様さん

北脇(K):僕は「ステークホルダーマップ」が印象に残っています。チームと関係者が複雑に入り組んだマップができ上がると、すでに知っている情報であっても、「本当に複雑な環境の中でやっているんだ」と、改めて実感させられました。

「ペインスケール」も興味深かったです。日常業務で起こりがちな「嫌なこと」をいくつか取り上げ、それがどのくらい嫌なのかを4段階で評価するというワークでしたが、メンバーそれぞれによって重視するポイントが違っていて、おもしろいと思いました。



ステークホルダーマップ
参考:ステークホルダーマップ

藤木(K):初めて受けたEQ検査のスコアが低かったことが印象に残っています(笑)。

まあ、冗談はさておき、参加したメンバーがそれぞれ「やらされ感」ではなく、目的意識をもってワークに取り組んでいたことが印象的でした。


吉田(H):EQ検査は、始めて受験するとスコアがあまり高く出ない傾向がありますからね(笑)。 ワークショップでの皆さんのふるまいを拝見して感じたのは、みなさん、それぞれ内省する力が強く、都度立ち止まりながら、考えることができているな、ということでした。皆さんのEQコンピテンシーは、実はとても高いと思いました。



4. ワークショップを体験してわかったこと、変わったこと

「仕事だからやる」ということの裏側にあるメッセージ


吉田(H):「あの人がこういう風に動いてくれないから・・・」と不満を感じるのは、よくあることですよね。私自身もそうした思考にとらわれることがあります。一方で「自分自身を思うように動かす」ことは、実は、相手を動かす以上に難しかったりします。感情はいろいろなメッセージを発しているけれども、それを正しくキャッチして正しいアクションを選ぶことは、言うほど簡単なことではないのです。このワークショップを通じて「自分自身の感情と向き合う」ことについて、何か変化はありましたか?


インタビュー中のGraat浅木さん、HYC吉田さん
インタビュー中のGraat浅木さん(左)、HYC吉田さん(右)

北脇(K)そうですね。ワークショップを受けてみて、自分自身の仕事への取り組み方に関する気づきがありました。 僕には「仕事だから、やる」というある種の割り切りがあったのだと思います。「仕事だからやる」自体は悪いことではないと思いますが、そう考えることで、自分の中にある違和感と向き合うのを避けていた面があると気づきました。もっと長い目で見ると、本当に目指すところを向いていないというか、プロダクトを本当に良くしていくために解決すべきことに向き合えていない、とどこかでわかっていた。「でも、仕事ってそういうものなんだ」というふうに、自分の気持を持っていっていた。その方が楽だったのだと思います。

このワークショップは、そこにちゃんと向き合って解決して行こう、ということに気づく機会になったなと思います。


ワークを見返す藤木さんと柴田さん
ワークを見返す藤木さんと柴田さん

藤木(K):私も「仕事だから、やる」というタイプですね。常々「事業部門が求めることを成すのが一番大事」と思っていますし。ただ、それだけではうまく行かないこともあります。それでも「仕事だからやる」と進めてきたのは、北脇さんの言う通り、諦めていたのかもしれない。求められることに応えるのが本当に正しいのか?という部分には切り込めていなかった。そういうことを考えるきっかけを与えてもらったと思います。


柴田(K):私は、相対する人の感情面を意識するようになりました。

私の仕事は、人に何かをお願いすることが多いのですが、依頼される側がどう捉えているんだろう、ということは、以前よりも考えるようになったと思いますね。自分の主張をいったん保留して相手の感情に意識を向けるよう心がけると、納得して取り組んでもらえることも増えました。また、うまく行かなかったときでも「自分のこういうところがまずかったのかな」という気づきにつなげることができるようになりました。


北脇(K):そう言われてみると、僕も「相手がどう考えているんだろう」ということを気にして、聞くようになったかもしれません。一緒に仕事をしているメンバーの感情や、どう考えて行動しているのかを知ろうと思う気持ちが強くなりました。


浅木(G):たしかに、皆さんとメンバーの接し方を拝見していると「バージョンアップされた」と感じますね。以前は、ご自身の考える「やるべきこと」をどう理解、実行してもらうか、というアプローチだったのが、最近は「メンバーは何がやりたいんだろう?どうなりたいんだろう?」に関心が向かっているように思います。


北脇(K):「だれもが自分の仕事をきちんとやろうという気持ちをもっているものの、多忙な中で無理をしているところもあり、それではどこかで破綻してしまうのではないか?本当に大事なことをやろうと思ったら、そこの考え方を少し変えなければならないんじゃないか」と藤木さんとも話したところです。メンバーの感情は小さなところにも現れると思うので、それをきちんと汲んで、本当に必要なことをやるような合意形成ができると良いですね。


藤木(K):今回のワークショップがきっかけになって、チームメンバーの意見を聞いてみる機会が増えたのですが、本当に一人ひとり、考えや思いは違っていて、そのことに改めて驚かされます。たとえば、リモートワークで働くメンバーどうしのコミュニケーション1つをとっても、「互いの顔や人となりを知っていると仕事がやりやすい」と言う人もいれば、「仕事以外の接点はない方が進めやすい」という人もいます。こちらの問いかけに、想像を超えるような答えが返ってくることもあり、人の多様性を実感しています。 こうしたことに目を向けるようになったのも、今回のワークショップがあったからだと思います。



5. チームの展望、そしてこんな人にワークショップを勧めたい

認識合わせを高速で行っていかなければいけない世界の中で


吉田(H):自分が感情を持っている生き物であるということがわかっていると、相手のリアクションが想定通りではなくても、「相手がどう受け取って、どう思ったのだろう?」という問いが生まれ、その問いが起点となって自分以外の人とのコミュニケーションが回転し始めます。皆さんのお話から、このサイクルが始まっていることが伺えますね。最後に、今回のワークショップで得たものを、どのように活用していきたいかなど、今後の展望をお聞かせいただけますか?


藤木(K):アダプティブリーダーシップという考え方は、我々が取り組んでいる「社内アジャイルコーチ」育成の文脈にマッチするテーマだと思い、今回のワークショップ実施を決めたのですが、マネジャーである自分自身にとっても良い学びの機会となりました。

最近は、メンバーへの期待や自分の思うところをオブラートに包まずに「こう思うんだけど、どう?」と聞き、そこから相手の思いを引き出すようなコミュニケーションスタイルを心がけています。自分の本心を開示することがチームの透明性を高めることにもつながるのかなと思っています。


柴田(K)このワークショップは、アジャイル開発チームのコミュニケーションを円滑にしてくれる効果が期待できると思っています。

アジャイル開発ではドキュメントよりもコミュニケーションが重要なので、開発者以外のロールの人もEQや適応課題の知識、スキルを身に付けていると、より仕事が円滑に進むのではないかと思っています。 たとえば、バックログアイテムの不明点を明確にするというようなシーンでも、お互いの意図や求めていることを想像しながら話すだけで、コミュニケーションが変わってくるのかなと思います。

私たちのチームは、それぞれがプロダクトに対する強い思いを持っているがゆえに、それを伝えることに意識が向きがちになり、互いに言いたいことを言い合うだけになりやすいのですが、そうではなく、「相手はこういうところを気にしているんだな」と意識するだけでも、コミュニケーションが円滑になると思うので、そういうところを取り入れて行きたいです。


北脇(K)いま、我々がおかれているビジネス環境は、相手の求めていること、自分が期待されていること、アウトプットイメージなどの認識合わせを高速にやって行かなければならない世界です。かつてのような「厳密な計画と文書を作り、決まった通りにものを作る」という世界では、もうないのだと思います。

「アダプティブリーダーシップ・ワークショップ」で取り扱うスキルやマインドは、同様の環境におかれている人や、アジャイル開発に携わる人なら、だれもが意識すべきものだと思いますし、今後も継続的に取り組んで行きたいです。 また、メンバー間の認識を合わせるための基準となるノーブルゴール、「目指すところ、自分たちは何のためにこの仕事をしているのか」について話せるような研修も考えて行きたいと思います。

レンガ職人の寓話にもあるように、どうしても日々の仕事に追われて「自分の仕事はレンガを積むこと」となりがちですが、単にレンガを積むのではなく、「皆が集まれる聖堂を建てているのだ」という意識と、「自分はそこを目指したい」という思いを共有できるチームを目指したい。いますぐではないかもしれませんが、メンバー全員が「そこを目指したい」に気づけるタイミングで研修を実施できたら理想的だと思います。


インタビューを終えて記念撮影
インタビューを終えて記念撮影



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