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執筆者の写真吉田 裕美子

タレントモビリティを高める時代-3 タレントモビリティ(人材の流動性)に備える② タレントモビリティを活用して、自律的なキャリア構築とエンゲージメント向上を実現する方法

更新日:2023年10月30日

トランジション・デザイナーの吉田です。


東京は穏やかな晴天の日々が続いていますが、皆さんの地域はいかがでしょうか?

私はといえば、こんなに良い天気だったにも関わらず、終日在宅勤務、PCの前から動けず・・の1日で、ベランダでお日様を浴びてビタミンD吸収を試みてみましたが・・結果は??


さて、今日は、タレントモビリティ(人材の流動性)に備える、その2。

社員の自律的なキャリア構築が重要になります・・というお話しです。



主体的に手を挙げることの重要性


タレントモビリティを実現していくことの理由の1つに、社員が求める多様な経験を提供するということがあげられます。経営者の判断や、人事的な戦略として、異動を命令するのではなく、


自らのキャリア構築のために新しい経験をしたい
個人的に感じている課題解決につながる仕事や自己のテーマに則した仕事をしたい

といった、主体性が重要なポイントになります。


これまでの人事異動ではなく、こうした主体的な意志決定で職務を変えることがなぜ必要になってくるのでしょうか?


理由は、社員のエンゲージメントを高める必要性があるからです。


書籍、『人事のためのジョブ・クラフティング入門』(川上真央、種市康太郎、齋藤亮三 著)では、エンゲージメントの説明として以下の記述があります。


熱中するエネルギー、ポジティブで充実した状態。
内的報酬を強く感じながら、自分の仕事に「のめり込んでいる」こと

内的報酬とは、仕事そのものから生まれる喜び、やりがいのことです。


そのような内側から生まれてくるモチベーションがなぜ、今、特に必要なのか考えるにあたって、参考になるのは、アメリカの心理学者であるエドワード・デシ(Edward L. Deci)とリチャード・ライアン(Richard M. Ryan)が1985年に提唱した、自己決定理論(Self-determination theory)です。


自己決定理論では、外から何かを与えられる外発的動機付けより、自らの興味関心により動機付けられる内発的動機付けにより生まれた行動の方が、学習効果もパフォーマンスも高いことが示されています。


この変化の時代において、難しい課題に取り組むエネルギーや、失敗を乗り越えて学び続ける姿勢は、内発的動機付けによって生まれてくるのです。

そのためにも、企業が社員のエンゲージメントを上げていくことは不可欠なのです。


では、内発的動機付けはどのようにして生まれてくるのでしょうか?


前述の自己決定理論では、以下の3つの基本欲求を満たすことで外発的動機付けから、内発的動機付けへと、動機付けが変化していくことが示されています。


  • 有能さ:自分の能力とその証明に対する欲求

  • 関係性:周囲との関係に対する欲求

  • 自律性:自己の行動を自分自身で決めることに対する欲求。

そして、この3つの中で特に「自律性」の欲求が重要だとされています。つまり、自分自身で決めるということです。



日本企業のエンゲージメントの状況


日本企業内では、長いこと、人材のローテーションは人事部門の役割で、企業から出された辞令に社員は素直に従ってきました。キャリアの方向性は多くの場合、企業側が決定権を握っていたため、社員側は、「課長になる」「部長になる」といった階層を上がっていくことや、それによる給料の増加というモチベーション、つまり外発的モチベーションはあったかもしれませんが、仕事そのものへのモチベーションは、高くなかったのも事実です。


2017年、米ギャラップ社のエンゲージメント調査で、熱意ある社員が6%のみという日本企業の診断結果が出され、日経新聞にも掲載されたのを記憶されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?


「熱意ある社員」6%のみ 日本132位(日経新聞 2017年5月26日)


それからだいぶ月日は流れましたが、2022年のギャラップ社の調査でも、日本は依然として東アジア圏内でランク6、エンゲージされた社員の割合が5%となっています。





ちなみに、地域単位に見ると、トップはアメリカ・カナダ圏で、エンゲージエントは33%となっています。日本が含まれる東アジア圏は、第7位となります。






どのようにして、自律的なキャリア構築に結びつけていくのか


ギャラップ社の調査結果を見る限りでは、日本企業に勤める社員のエンゲージメントは依然として低い状態が続いています。


エンゲージメントは、内面から仕事への興味関心が湧き、内的報酬を感じながら、その仕事にエネルギーを注ぎ込むことで向上していきます。


この「内面から興味関心が湧く」ということをいかに促すかが重要になってくるのです。


好きなことを仕事にするというのも1つの考え方ですが、仕事とは、そもそも、世の中のさまざまな問題を解決し、他者の成功や幸せを支援していくものだとするならば、大切なことは、自分はどんな問題を解決していきたいのだろうというテーマを見つけ出すことではないでしょうか。


少し古いですが、こんなTEDトークがあります。


Saving the Silver Bullet: Jaime Casap at TEDxFargo



このビデオの中で、GoogleのEducation Evangelist(当時)のJamie Casapさんは、教育の重要性を説きながら、こんなことをおっしゃっています。


若者に会うとき「何になりたい」とは絶対き聞かない。僕は、必ず「どんな問題を解決したい?世界や社会にどんなインパクトを残したい」と聞く。

これこそ、内発的に学び続けること、キャリアを主体的に考えるための鍵であると私は考えます。


しかし、長い間、学校ではよい成績を収め、会社では課された目標を達成することに慣れすぎてきているビジネス・パーソンは、急に「どんな問題を解決したいか?」と聞かれても、なかなか答えることはできないでしょう。


その時に重要になるのが、自分の感情を捉える力です。


どんな時に、自分は嬉しいのか。どんな時に、悲しいのか。どんな時に、怒りを感じるのか。何を美しいと感じ、何を醜いと感じるのか。

感情は、自分が出来事をどういう価値基準で評価しているかを教えてくれます。


そんな自分の内面の観察、感情の動きを捉え、自己認識を向上させる能力を、感情知能(Emotional Intelligence: EQ)と呼びます。


自分の中で生まれてきている感情と、そこから発せられる情報をとらえながら、少しずつ、自分のテーマを言語化していくことで、自分自身のキャリアの道筋も見えてくるものです。


早稲田大学名所教授の細川英雄さんの書籍『自分の〈ことば〉をつくる』は、決してキャリアに関する書籍ではありませんが、自分自身のテーマを持ち、自分として存在することの大切さ説いた、素晴らし書籍です。



まとめ


今日のブログは長くなりましたので、少しまとめてみましょう。


タレントモビリティを実現し、組織と人が共に繁栄していくためには、タレントモビリティをこれまでの人事異動と同じであるととらえてはなりません。


社会は複雑に変化し、企業が解決しなければならない課題も一筋縄ではいきません。

難しい課題に取り組み、成果を上げ、社会をより良くしていくためには、そこで働く人たちが、内発的動機付け、内的報酬によって、仕事そのものにのめり込む、エンゲージメントが必要になります。


エンゲージメントを高めていくためには、自分自身で考え、行動を選択する、自己決定が欠かせません。


そして、自分自身の職務を自分自身で選択していく、すなわち、自律的なキャリア構築を支援するために、社員の感情知能の開発と対話の時間は、有効な手立ての1つと言えるでしょう。


今日引用した書籍、参考にした書籍は、以下になります:









次回は、タレントモビリティへの備えの3番目、アジャイルなチーム運営について考えてみます。


 

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