(このブログは、Graat社とのリレーブログ『チームとテクノロジーの幸福な関係』の記事として投稿しています。)
コラボレーション研究家の吉田裕美子です。
企業は、できることなら、"優秀な" 社員をたくさん採用したいと努力しますよね。 私も、小さい会社ではあるものの経営者という立場で、人に恵まれていることに、本当に心から感謝しています。
では、「優秀な人」とはどんな人なのでしょう。改めて考えてみると、かなり曖昧な部分があるのではないでしょうか?
それは、
チームメンバーをうまく率いていくリーダーに早くなってくれる人だったり、
1教えれば、10理解する人だったり、
意欲的に仕事を進める人だったり、
知識をたくさん持っていて、それを活かせる人だったりもします。
人は、誰でも優秀さを保有しており、それが活かされる場所があるかどうかで、評価が変わるというのが真実だと、私自身は考えていますが、仮に、
いざという時に、「あの人に頼もう」と周囲から思われる人
依頼事項を適切に判断し、スピーディーに完了する人
という様な人物像を、優秀なリーダーと想定してみます。
いますよね、会社の中に、こういう感じの「優秀な」リーダー。
仕事がどんどん集まっちゃう、でもあのレベルで仕事ができる人は他にいない、忙しそうだけど、どうしよう?という感じの方。
■なんで、できないのかな?
突然ですが、ゴルフの話です。
私は、ゴルフをする人ではないのですが、打ちっぱなしに何回か行ったことがあります。
まだ20代前半の頃の話ですが、会社の同僚と一緒に行きました。
猛烈に運動神経の良い、Hちゃんは、「こうグラブは握って、こんな風に打つんだよ」とベテランに教わって、教わった通りにスウィングし、その直後、軽快なスウィングとグラブがヒットした音と共に、玉は円弧を描いて遠くに飛んで行きました。
はぁー。
いらっしゃいますよね、こういう方。
私は、全く真逆の人間です。ちなみに。
どうして、1回口頭で説明されただけで、その通りに体が動き、ちゃんと打てるのか、全く想像もできないというのが、私の感想です。
しかし、「できる人」からすれば、なぜできないのか?がわからないのです。
話が遠回りになりましたが、企業の中で優秀であるとラベリングされている多くのリーダーは、この様な傾向があります。
仕事を教わる時、あるいは業務内容の説明を聞いている時、自分がこれから取り組む仕事について施策を練る時、そこで語られている情報、提示されているドキュメントの内容などを、頭の中で処理するプロセスが優れているのです。
よく見かける優秀なリーダーの思考方法として、論理的思考、批判的思考、そしてそれらに加えて、アナロジー思考があります。
アナロジーは、日本語では類推と呼ばれます。
ある事物に基づく情報と、他の事柄の間の何らかの類似性を認知する力で、「遠くから借りてくる発想力」と呼ばれることもあります。
この「思考する」プロセスの処理能力が高い人は、具体的な事象をスピーディーに構造化、抽象化して、他の事柄とつなぎ合わせて考えながら理解を進めています。
どんな目的で今情報を収集しているかが途中でぶれず、目的を達成するために抜けている情報を即座に集めてくる能力があります。
そして、自分自身がその様な思考プロセスをナチュラルに行っているので、自分が仕事の指示や説明をする際、意図せず、少しインストラクションが不親切になってしまう事象が起きてしまうきらいがあるのです。
■理解を支える仕組み
下図は、一般的な思考のプロセスをモデル化した図です。この、「プロセス」の部分で、様々な情報をどの様に構造化できるかが、行動や発言に影響を与えます。また、プロセス(思考)の部分で、構造化しようとした際に不足する情報を、さらに検索するという行動につなげていくことを、「優秀だ」と言われる方々は実践しています。
点在する情報をインプットし、つなぎ合わせて、構造化する能力は、論理的思考力や批判的思考力、アナロジー思考の力などに該当し、結果的に、行動や発言の的が定まってくるわけです。
思考トレーニングは、現代の人財開発において重要なテーマではありますが、誰もがゴルフがすぐにうまくならない様に、思考力が向上するスピードも人によって様々です。
だからこそ、このクエリーとインプットの部分を、理解しやすい様、整えて提示する技術や仕組みが必要になるのです。
上のモデル図を見ていただくとお分かりのとおり、クエリーとインプットが、プロセスを支援し、アウトプットの質と量を変えます。言い換えると、人がミスを犯すのをなるべく少なくするためにも、クエリーとインプットの部分を変えることが重要なのです。
前回のリレーブログは、Graat浅木さんが『自律的なチームを作る情報設計』というテーマで書いてくださっています。
情報設計という言葉が耳慣れない方もいらっしゃるかと思いますが、起源を辿ると、リチャード・ソウル・ワーマン氏が、著書『理解の秘密―マジカル・インストラクション』の中で提唱している 「インストラクショナル・デザイン」という、理解を促す概念から、「理解をデザインする人」としてのインフォメーション・アーキテクトという職業が考案されたと言われています。
インフォメーション・アーキテクトが使う技術が情報設計(インフォメーション・アーキテクチャー)です。
クエリーとインプットとなる情報を、理解しやすい様、整えることは、まさにインストラクショナル・デザインの概念そのものであり、技術としての情報設計が必要になります。
次回、Graat浅木さんのブログは、情報アーキテクチャ(IA)のフレームワークを応用したITチームのドキュメント管理とツールによる実装について、お伝えくださる予定です!ぜひ参考にしてください!!
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